43才の会社員です。手が痺れ、足に力が入らないため、病院を受診したところ多発性硬化 症と診断されました。インターフェロンを勧められましたが、他の治療去は無いでしょうか?
多発性硬化症にはインターフェロン療法の他にステロイド注射などもあります。症状に合わせて治療方法を選択します。

 多発性硬化症は脳や脊髄が散発性、多発性に破壊と修復を繰り返す特殊な疾患で厚生労働省の特定疾患に指定されています。手足の麻痺やしびれ感、振るえなどの症状が時間的、空間的に多発するのが特徴です。人口1万人に1人の有病率ですので春日市には10人程度の患者さんが居られる計算ですが最近、診断の精度が上がり増加傾向です。中枢神経の神経細胞のサヤである髄鞘がアレルギー反応により破壊される脱髄が主な原因ですが、神経の障害が進行し、修復を繰り返す度に脳は傷んで硬くなっていきます。神経機能障害は通常、身体の一側から発症し、他側に波及するため次第に両側性の障害になります。運動神経の障害が中心ですが、脊髄が障害されると感覚、排尿などの障害も同時に出現します。

 診断はMRIで行われ、精度は90%以上です。他に髄液検査・視覚誘発電位・CTなどの標準的な検査も同時に行われますが、精度は不確かです。MRI上の多発性硬化症の脱髄病巣は、大脳深部の脳室周辺や皮質下に多発するため、脳梗塞などと異なる特徴的な分布を示します。

 インターフェロンβ療法は、多発性硬化症の長期予後を改善する最も有効で画期的な治療法ですが、経済的あるいは副作用の問題などもあり、更に新薬の開発が望まれています。急性増悪時には再発進行抑制とは異なった治療法であるステロイドの大量パルス療法が奏功します。他に温度感受性障害や易疲労性、うつ病、三叉神経痛なども合併しやすく、これらの対症療法もQOLの改善に直接結びつき、治療法を適切に組み合わせることで予後を著明に改善することが出来ます。



写真は43才男性のMRIで、脳室周辺や大脳の皮質下(赤丸)に多発性硬化症の病変を認めます。インターフェロンβ療法が著効しています。

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片頭痛持ちの56歳男性ですが、先月社員の結婚式でスピーチをした直後から記憶が飛んで変になり、救急車で病院に運ばれました。翌日は正常に戻りましたが、前後の記憶は無いままです。何か病気の前兆でしょうか?
一過性全健忘と思われますが、片頭痛の副症状の可能性があります。

記憶の障害を主症状とする一過性全健忘(transient global amnesia:TGA)は意識が清明ながら、突発性に何回も同じ質問をし、時間などに関する見当識が完全に障害される状態です。意識は正常で失語や失行はなく、食事や身の回りのことは普段通りできるにも関わらず、健忘と困惑が最長24時間ほど持続する特殊な病態です。50歳前後に好発し、10万人に6人程度の発症で、片頭痛に関連があると考えられています。
 昔の古い記憶たとえば10年前に家を新しく建築して苦労した話などはできますが、つい最近の新しい記憶、たとえば当日の朝食のことなどは忘れています。TGAの発作の後には、新しい記憶ができない順行性健忘や、発症前に遡って記憶が障害される逆行性健忘の両者が出現し、エピソード記憶、近時記憶の障害が存在するものの、即時記憶は保たれているのが特徴的です。TGAでは数字の復唱は可能で、意味記憶は障害されないので、諺の意味は正確に説明可能です。また手続き記憶も障害されないので車の運転は可能です。見当識はTGA中に障害されていることが多く、その後時間、場所に関する障害が目立ちますが、人に関するものは障害されないのも特徴です。
 病前より片頭痛を合併している率が高く、誘因は強度の精神的・身体的ストレスに困ることがほとんどです。若年者でのTGAの原因が片頭痛であるとする報告があり、片頭痛の関係は重要です。病変部位は側頭葉の内側、海馬付近であることがMRI所見などより明らかで海馬を中心に局所性の浮腫を認め、cortical spreading depression:CSDの所見と考えられています。治療は片頭痛の予防薬である塩酸口メリジンが唯一有効な薬剤であり、片頭痛の前兆の病因と考えられているCSDを抑制し、TGAを改善できると考えられています。




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頭痛持ちの27才、OLです。最近、生理前後に頭痛が強くなり仕事に支障があって困っています。片頭痛はどうして起こるのでしょう
女性の約半数が頭痛の経験があると言われていますが、特に月経前後の片頭痛は重症になりやすく、適切な治療を要します。

 日本には約840万人の片頭痛患者さんがいると考えられていますが、このうち約8割を女性が占めています。一般女性の約半数が月経前後に片頭痛を経験していますが、殆どの女性は頭痛はいつもより厳しく、長く続き、治りにくいと感じています。また、月経前後の片頭痛とそれ以外の片頭痛の賃は異なることが知られており、月経前後の片頭痛は閃輝陪点などの前兆を伴わないのが特徴です。最新の国際頭痛分類では、月経に関連する片頭痛の定義を月経周期の3回中2回、片頭痛が月経2日前から3日目に起こり前兆を伴わないとしています。  月経前の2日間において、片頭痛は他の期間と比べ1.7倍の確率で起こり、2.1倍の確率で激しく、月経の最初の3日間では2.5倍の確率で起こり、3.4倍の確率でひどくなり易いことが分かつています。片頭痛は、月経初日の2日前から3日目の5日間の間に起こり易く、この分析は月経前後の片頭痛が他の期間における片頭痛に比べ嘔吐や吐き気を伴い易く、より激しいことを示しています。月経前後の5日間、片頭痛が起こる危険性は他の期間と比較して約2倍になります。  片頭痛の生物学的な意義は妊娠可能な女性にとって発情期と相反する双極的な生理現象として妊孕性を高める効果が期待できます。原因は女性ホルモンの急激な減少以外に血中の一酸化窒素やセロトニンの変化が考えられています。  治療は市販の鎮痛剤は嘔気など消化器系の症状に無効なため効果も不安定です。片頭痛専用薬であるトリプタン製剤は特に有効で、70%以上の患者さんで著効します。




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パーキンソン病の治療に磁気刺激治療があるそうですが、どのような効果があるのでしょうか?
経頭蓋大脳磁気刺激法(TMS)と呼ばれていますがパーキンソン病以外に、うつ病などにも効果があります。

 パーキンソン病の治療はこれまで薬物療法と運動療法が主体でしたが、最近、第3の治療法として磁気治療が実施されるようになりました。頭部に磁気刺激装置のコイルを当て2テスラ程度の磁場を発生させると、脳の神経細胞を刺激することが出来ます。磁場は骨や軟部組織、衣服や空気さえも通過し、脳の局所にイオン電流(渦電流)を生じることによりバーキンソン病などに大切な神経伝達物賃であるドーパミンやグルタミン酸、GABAなどの調整に関与出来ることが知られています。GABAを介した抑制系は大脳皮質に広く存在していて、大脳皮質での細かい調整に重要な役割を果たしており、この方法で運動野での神経細胞の活性化が期待できます。磁気治療は、痛みを伴わない非侵襲的な刺激法として広く普及しつつあり全世界で使用されており、バーキンソン病以外にも、うつ病、脊髄小脳変性症、尿失禁、斜頚、ジストニア、難治性疼痛などの治療に応用されつつあります。
(1)うつ病…うつ病患者は左の皮質興奮性が右に対して低い非対称性があり、皮質興奮性を一過性に高める5〜20Hzの高頻度磁気刺激を左の外側前頭前野に刺激する方法が主流です。
(2)脊髄小脳変性症…厚生労働省班研究として「脳磁気刺激による神経難病治療法の開発に関する研究」がスタートし、磁気治療の有効性が検討されています。
(3)尿失禁…仙骨部に高頻度磁気刺激を行い、尿失禁治療を行う研究が行われています。非侵襲かつ手軽な治療法として期待されています。




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